シンジがネルフ施設内の廊下を歩いていると、向こう側に見知った顔の男がいる事に気付く。
加持リョウジはシンジの存在に気付いたようで、整った顔立ちは軽い笑みを浮かべた。
こちらに歩み寄ってきた加持に、とりあえずシンジはぺこりと会釈をするも、反射的に身構えてしまう。
それから加持はシンジの前まで来て立ち止まり、シンジの細い腕を掴み、「行こうか」と囁いてウィンクをした。

「はい…」

シンジは顔と耳に熱が集中してくるのを感じながら小さく返事をする。
ただ、腕を掴まれる―――なんてことない動作でも、それを実行されるだけでシンジは加持を否定できなくなってしまう。
そのまま腕を引かれながら、シンジは声すら発せず加持とともにあの部屋へと向かった。そしてこれからされるであろうことを考えて、胸の鼓動が速くなる。
ゆうゆうとした加持の様子とは対照的に、まるっきり余裕のない自分がますます滑稽だ。
こんなはずじゃ、なかったのに。いつからこんなふうになってしまったんだろう。

(おかしいのは僕?それとも、僕に触る加持さんのほうなの…?)



*******



 バタン、と音を立ててドアが閉まる。

光があまり入らない薄暗い部屋は、もうすでに使用されていないらしく、倉庫と化しているような場所だった。
あちこちに棚や机、椅子が置いてあり、特に棚には溢れそうな程の資料がたくさん保管されていた。
机や椅子は思いのほかきちんと整理されてはいるが、薄く埃が積もっている。指でそっと軽くなぞればくっきりと跡がつきそうだ。
ガチャリ、と鍵が掛かる音。それは始まりの合図でもあった。
壁にそっと背中を押し付けられて、女の子を扱うみたいに優しく頬を撫でられる。加持の掌から伝わってくるぬくもり。
その手つきがあんまり優しくて、シンジはさらに顔が紅くなってゆくような気がした。

シンジは嬉しくて嬉しくて、たまらなくて泣きそうになるのを必死でこらえた。

「加持さん…僕、会いたかったです…。何でもっと早く、来てくれなかったんですか…?」
「すまない、待たせたな。辛かったかい?」
「あ、当たり前じゃないですか!だ、だってコレ、」
「よく耐えたじゃないか。いい子だ」
「もうっ、人事だと思って…。 僕がどれだけ…っ!ぅ、あぁっ」

加持がポケットの中に入れている薄いリモコンののスイッチをMAXまで上げると、シンジは顔を歪めて高い声で身悶える。

「やあ…ぁあ…んっ…すご、い…動いて…ぁあ」

シンジの中に埋め込まれている物が、大きな振動で蠢きながら緩やかに律動してゆく。
思春期で未熟な少年の身体でも、それは快感を呼び覚ますには十分すぎるものだ。
規則的な機械音に混じって、淫らな液体が秘孔を濡らし―…それが零れて内股にとろりと伝うのをシンジは感じた。

「うぁ…はあ、」

シンジは膝をガクガクと震わせて今にも座り込んでしまいそうだった。
一方的に与えられる快感に荒い息遣いをするシンジを、加持は至近距離で楽しそうに傍観している。
間近で見下ろされれば、緊張と興奮で息が詰まるのに―――身体はいやでも反応した。確信行為者だ、とシンジは思う。



*******



「シンジ君…もしかして大人の玩具の味、覚えちゃった?」

ふざけたような口調のくせに多少的を得ているその発言が、余計にこの現状のリアルさを一段と際立たせる。
それを認めてしまうのがシンジにとってはおそろしかったが、加持にはそんなことはどうでもいいようだった。

「違い…、ます…っ」
「覚えちゃったんだね。だって、すごく気持ちよさそうだ」
「ん、ああっ…か、加持さん…っお願い、止めて、ください…やぁっああんっ…!」
「コレ我慢するの大変だっただろ?自分じゃ外せない仕組みになってるからな」
「はぁっ…はあ、ぁう…ゆ、ゆるして…っ、ぁあ…ゆるし、て…」
「君が悪いんだよ、シンジ君。ちゃんと自覚してくれないから」

加持はシンジの着ている制服のボタンを丁寧に外し、Tシャツの下からするりと手をいれては綺麗な肌を堪能した。
シンジが異物の振動に身を捩っているのにもかかわらず、やがて加持は手早く下半身の衣類さえも取り除いてしまう。
そうやって下着の下から現れた、シンジの勃起した性器―…そんなシンジの淫奔さに、加持は焦燥が募るばかりだった。

(だって酷いじゃないか。君の恋人は俺なのに、君があんまり他人に優しくしたり笑顔を振りまくもんだから、俺はそれが本当につまらない。俺は君を心からこんなにも愛しているのに、どうして)

「分かってくれないなら、お仕置きしないとな?」
「…ぁ、あっ」
「君が俺の事しか考えられなくなるくらい、たっぷり可愛がってあげる」
「あぁ…っ、加持さん……、加持さん、あぁっ…ぁ」

(知ってるさ…君が俺を好きだってことくらい。でも俺は足りないんだ)

加持がそう考えているうち、頬をピンク色に染めたシンジが潤んだ瞳でいっそう強く加持にしがみついてくる。
快感で脱力しそうな身体を自分一人の力で支えきれないのだろう、そんなシンジを加持は満足げに見下ろした。

「あぅっ、もぉ、やぁ…!なんで…?僕が好きなのは…っ、加持さんだけ、なのに…」

途切れ途切れにシンジはそう言って喘ぎ声を漏らす。

「これからはもっと態度で示してくれると嬉しいよ、シンジ君」

シンジの顎をくい、と持ち上げて柔らかい唇に引き寄せられるようにキスをする。
呼吸をしようとと開かれたわずかな口の隙間から舌を挿し入れれば、シンジが、ん…、とくぐもった声を漏らして目を瞑った。
湿らせるように何度も何度も柔らかな舌を追いかけて舐めては絡め、互いの唾液が混ざり合いどちらのものか分からなくなるくらい相手を求める。

「ん、ぅ……ふ、」

自分の中で律動している玩具と加持との濃厚なキスのせいで、シンジの身体はもう抵抗ができなくなっていた。
加持も、シンジがひとつひとつの行為に純粋に反応してしてくるので余計に理性を煽られた。
そろそろ息が苦しくなってくるだろうと思い、加持は唇をそっと離すと、シンジは口の端からトロリと唾液の糸が一筋流れる。

「あっ…ぁ、ど、どうしよう加持さん…なんか、僕…おかしくなっちゃっ…!た、助けて…」

そして懇願するような、物欲しそうな瞳で見つめてくるものだから、加持は思わずゴクリと唾を飲む。
翻弄させているのは俺のほうなのに、俺に助けを求めるのか?と加持はシンジの耳元でそっと囁いて意地悪く微笑む。

「あ、そ、それは、その…」
「大丈夫、シンジ君は…不安になんてならなくていい。俺が何とかする」
「……!加持さん…っあ、」

嬉しいです、と消え入りそうな声色で言ったシンジの頬には、綺麗な涙が伝っていた。
その涙はあまりにも純粋すぎて儚いもので、加持の中の想いは益々強まってゆく。
あと少しだ、と加持は思う。
あと少しで、この子の心は俺でいっぱいになってくれるだろう、と。もっと深く、繋がれるだろうと。

「僕、加持さんと一緒にいたい…。加持さんの傍にいても、いいですか…」

恍惚とした表情で訊いてくるシンジに返事をする代わりに、加持はシンジの華奢な身体を力強く抱き締める。
シンジの頬にまた、感動と嬉しさで幾筋もの涙が伝っては落ちていった。

「分かってるよ。ずっとずっと大切にしてあげる。だから君は、俺のことだけ見てればいい」




(この広い世界で ふたりだけの 隔離された空間で)




End.


2010.07.11


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