「あ、あのっ、加持さんて今でもミサトさんのこと、好きなんですか?」
Yシャツの裾をくい、と引っ張られる。
この少年の普段の性格からして、積極的に追求してくるのは多分珍しいかもしれない。
そんな姿を見て可愛いと感じるのは、俺がもうすでにこの少年に魅了されてしまっているというワケで。
いきなり何を聞かれたかと思えば、それは葛城との関係だった。
シンジはちらりと目を合わせてきたが次の瞬間には拗ねているような表情になって、どことなくもどかしそうにしている。
これは一体。
面白くなってきたから、からかってみることにした。
「どうしてそんなこと聞くんだい」
「べっ、別に特に理由はないですよ!ただ、ちょっと気になっただけですから」
「ふぅ~ん?」
「!すいません。僕っ、変なこと、聞きましたよね」
「どうして謝る?俺は別にかまわないさ。あぁ、シンジ君もしかして、」
…嫉妬してるの?
そう言ってシンジの頭をさらりと優しく撫でて耳元で呟けば、予想通り真っ赤に頬を染めて恥ずかしそうに視線を逸らされた。
あぁ、敏感に反応しちゃって。
「ち、違いますよ!からかわないでくださいっ」
「シンジ君に嫉妬されたら俺、嬉しいけどなぁ」
「もぉ…っ、加持さんってば!」
シンジ君ってホント素直じゃないなぁ、そして自分の思いに気付いてないときた。
俺はシンジ君の本当の気持ち、面白いくらい分かるよ?
もっと俺には正直になってくれてもいいのに、やっぱりそれはまだ難しいか。
いつも他人を配慮するあまりに余計な気を遣ってしまっているんだな。
君は、とても優しいから。
「確かに、葛城とは深い仲だったよ。彼女といるときだけは嫌なことは全て忘れられたからな」
「…ミサトさんも前に加持さんと同じようなこと言ってました」
へぇ、葛城がそんなことを。俺が想像してた以上に、あいつは君を信頼してるみたいだな。
まぁそうでなきゃいくら14歳の男の子といい、一緒に住んだりはしないだろう。
「お互いそういうふうに想い合えていたのって、すごく幸せなことなんですよね。僕、今まで誰かとちゃんと通じあえたことがないから。どんな感じなんだろうって、思っただけです」
そう言って、シンジは不安そうな顔をしてまた俯いてしまった。
通じあえる…か。それは愛しあえることにもつながるのだろうか?
愛されると心は満たされるのに、愛するのは何故か、どんなに愛しても愛しても足りなくて欲しくなる。
俺だって、未だにその答えは分からない。
End.
2010.07.11
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