指先でシンジの胸の突起を掠めると、眠っているシンジの身体がほんの少しだけ身じろぐ。
「………。」
(もしかして、今ので感じてくれたのか)
なかなかのいい反応に、やめなければと思うのに、もっとしたいと本能が訴える。
人差し指と親指で突起を摘んでくりくりとこねだすと、シンジの両肩が小さくピクンと震えた。
薄い布越しから、くい、と強く引っ張れば、シンジの身体が先程よりも大きくビクリと動くのを加持は見逃さなかった。
そんなシンジの様子を見た加持は、すぅっと目を細め、左の掌でまだ触れていないもう片方の乳首を押したりころころと転がしはじめる。
みるみるうちに、シンジの乳首は硬さを増してゆく。
「―――…っ」
「なぁ、シンジ君」
加持は両手を使い、ふたつの胸の象徴を弄びながら、シンジの顔に近づいて耳元でそっと呟く。
「起きてるんだろ…、なんで寝たふりしてるんだ?」
注がれる甘い低音に、シンジは頭の上からつま先までがぞくりと身震いする。
加持の射るような視線を感じて耐えきれなくなったシンジは、はぁ、と溜息をついて長い睫毛の生えた両方の瞼をゆっくりと開けた。
そしてバツが悪そうに、
「だ、だって目を開けるタイミングが分からなくって…!加持さんが…その、胸さわってくるからっ。いやでも目が醒めたんです!」
と、一気にまくし立てながら言った。
抗議の声をあげてふてくされるシンジに、加持はこみあげてくる笑いをこらえながら楽しそうに言葉を返す。
「ようするに、気持ちよくなってきちゃったんだろ?」
「っ!それは…。大体、僕ホントに寝てたのにいきなり加持さんがあんなコトするからいけないんだ!」
返事に詰まりつつ拗ねるシンジに、加持はへらっと笑ってこともなげにひやかした。
「うん。なんかシンジ君見てたらあんまり可愛くてさ、ついね」
「何が、ついね、ですか。加持さんヘンタイ。もう、いつから気づいてたんです?…ぁっ」
シンジが眉を吊り上げて反論する間も、加持はシンジの胸の愛撫をやめようとはせず、指の腹でつんつんとシンジの乳頭を押しつぶす。
「シンジ君が起きてるのに気づいたのは、指でココを強く摘んだ時さ。シンジ君ってすごく感度いいから、すぐに反応してくれるだろ?」
クスリと含み笑いをして、加持はシンジのTシャツの裾をぐいっと下に引っ張る。
シンジの胸のふたつの頂が、薄いTシャツの生地の布越しにくっきりと強調された。
「―…あっ!」
シンジはこそばゆそうに頬を紅潮させる。
男子特有の平らな胸なだけに、そのふたつの小さな象徴が、余計いやらしく見えるような気がする。
「Tシャツの上からなのに、もうこんなにピンとしてるのが見て分かるよ。…ホントは俺に襲ってほしかったんだろ?」
「や、やだぁ…っ」
シンジはいたたまれなくなり、焦って加持を押しのけようとすると、今度はひらりとTシャツを胸の上までめくられてしまう。
すると陽に焼けていない白い滑らかな素肌が露になり、加持はそこに目線を落とす。口元に、うっすらと笑みを浮かべながら。
ほんのりピンク色の、ぷるんと立ち上がっているふたつの突起はまるで、加持の愛撫を待ち焦がれているように見える。
「加持さん…見ないでっ」
泣きそうな顔をして、欲望を煽るような切羽詰まった声で言うシンジに、
「シンジ君、それ、可愛いだけだ」
と、困ったように笑いながら加持は答えて、シンジの胸に顔を埋めた。
次に心臓の辺りに軽くキスをして、右のほうの乳首をぺろりと舌先で舐めとる。
「ひぁっ」
シンジが声を上げると、加持はぱくりと小さな果実を食べるみたいに、柔らかなそれを唇に含んでは、ちゅっと音をたてて吸いついた。
舌先で転がしては突起を舐めあげ、その行為を繰り返してゆく。
「ぁ、だめ…」
シンジの声色に若干、熱がこもりはじめる。
加持はシンジの左の乳首をも掌でくりくりと転がし始め、指先で摘んで引っ張りながら、その反応を楽しんだ。
「あ…どっちも、なんて…やだよぉ、」
「そうか?ちゃんと感じてくれてる気がするけど、この程度じゃまだ足りなかったかな」
カリ、と口の中でシンジの突起を甘噛みすると、その緩い刺激に、シンジの全身に痺れるような快感が走る。
加持の巧みな舌遣いと掌の愛撫で翻弄される身体には、もう力が入らないようだ。
ぎゅっと目を瞑ってふるふると躰を震わせながら多感に反応するシンジに、加持の加虐心がむくむくと膨れ上がってゆく。
(シンジ君ってこうなっちゃうと、とことん素直なんだよなぁ。かーわいい…)
そんなふうに思っていると、シンジの細い腕が、するりと延びてきて首に回された。
シンジが甘えてくるとき―…無意識に小悪魔的な態度をとるときは決まって、彼自身が言いたいことがあるのだと加持は知っている。
けっしてわざとではなく、無自覚でやっているのに本人は気づいていない。
まさに天性の可愛らしさと言うべきか。ふたりきりの時や、事情の最中にしか見せない、シンジの可愛いらしい癖だ。
「どうしたの」
愛おしくなって目の前の黒髪の頭を見つめながらくしゃりと撫で、そう告げると。
「僕ばっかりはいやだ…。加持さんも、きもちよくなりたいでしょ…?」
揺れるシンジの潤んだ紺藍色の瞳に、吸いこまれそうなくらいじっと見据えられ、加持は一瞬言葉を失う。
シンジはむくりと起き上がって、あぐらをかいて座っている加持の下半身に手を伸ばした。
やがて、あどけない手つきでカチャカチャとベルトを外し、事に及ぼうとする。加持は慌ててシンジの行為を制止させようとした。
「やめろシンジ君、無理しなくていい…」
「させて、おねがい…」
すでにズボンの布地を押し上げていたそれは、興奮して充分なほど勃起していた。
シンジは加持のズボンを下着ごと下ろそうとしたが、加持は降参しつつ、分かったよ…でも自分で脱ぐからいいよ、と優しく笑って言い、下半身の衣類をすべて取り除く。太くて張りのあるそれは加持の体格に見合ったサイズで、立派なものだった。シンジはしゃがんで加持の股間に顔を埋めるようにして、犬のように身を伏せる。
目の前に曝け出された加持の勃ち上がっている大きな性器を、シンジは少しだけ恥ずかしげな面持ちで、目を凝らして見つめた。
「加持さん、おおきいね…」
シンジは愛おしむように指先でそっと性器を持ちながら、硬くしこった尖端を、唇でちゅっと吸い上げては口の中に含む。
小さな口を懸命に動かそうと、張り出した部分にねっとりと舌を這わせて舐めあげては、まるで甘いお菓子でも与えられたみたいに、シンジはうっとりとした目で加持にむしゃぶりついてきた。
「んぅ…む、」
高ぶった陰茎の先端から先走りの液が滲み出てきて、シンジはそれを味わうように舌先ですくいとる。
丸みを帯びた部分をぺろぺろと舐めまわし、口の奥まで入れては上下に幹を扱いた。
うっとりと加持を咥えながらちゅぱちゅぱと音を立てて不器用に舌を絡め、けっして上手いとはいえないが熱心に奉仕するシンジの姿に、加持の背筋がぞくりと震える。
「…はぁ…っ、かじひゃん、どぉ…?」
「こらこら、あんまり喋られると、歯が…」
加持はシンジの頭に手を置いたまま、夢中になって口淫をしているシンジを複雑そうな顔で見下ろした。
珍しく、やけに積極的なシンジの行為に、とても嬉しいけれど―…どこか拭い取れない不安を感じる。
いつもなら、自分からこんなコトをしたいと言い出すような子ではないはずなのに。
「ぅ、んん…っ」
シンジは加持の下生えの毛を愛でるように撫でながら、幹の根元に軽いキスを散らして、ときおり横から吸いついた。
ちゅぷり、と音を立てながら、シンジの口の中で、唾液と先走りの液が混ざり合う。
「シンジ君…、もういいよ」
薄い皮がいっぱいに張りつめ、唾液と体液でぬるぬるになった性器をくわえ続けるシンジを制止したが、シンジは加持を口いっぱいに頬張ってやめようとしない。
「おいっ、待てったら」
シンジの口淫でだんだん息が上がってきた加持は、しばらくすると小さく呻き、白濁液を迸らせた。
白く濁った濃くて苦い精液が、シンジの口の中いっぱいに広がる。
それをごくりと飲み干して口の端からわずかに白濁を垂らしながら、シンジは、おいしいです、とでも言うように加持に熱っぽい瞳を向けて微笑した。
―…完璧なほどに男を誘いこむその表情。
「………。」
「…加持さん?」
シンジが問いかけた次の瞬間、加持がシンジの両肩を、ぐい、と掴んでベッドに寝かせるように押し倒す。シンジは驚いて目を見開いた。
「そんな試すような真似して、俺にどうしてほしいんだ。言えよ」
「あっ、なにを…!」
加持は素早くシンジの下着を脱がした。そして、曝されて反り返っている性器を丁寧に撫でるように触れる。
大きな手でぎゅっと握りこまれるもどかしさに、シンジはもぞりと身体を捻った。
「今日はやけに積極的だけど、何で。あとさ、俺、あんな舐めかた教えたつもりないな。…誰から教わった?」
加持は若干の苛立ちを含んだ声でそう言うと、シンジのそれを握っていた手を離し、後孔にそっと指で触れる。
それからベッド脇の棚の引き出しを乱暴に開け、あらかじめ用意しておいたローションを取り出しては、ぴくぴくと震えている繊麗な秘孔の周囲にそのどろどろとした液体をぬるりと塗った。
「ひゃぁっ、つめた…!」
ローションの冷たさに身じろぐシンジの秘孔を指でなぞり、つぷ、と中指を挿入した。
シンジは違和感に身体をこわばらせ、どことなくつらそうに表情を歪める。
「まさかとは思うけどさ。俺以外に、ココに触れてる男がいるとか」
シンジの耳元に口を宛て、わざと追い詰めるような言葉を吐きながら低音を注ぎ込む。こうしてしまえば、シンジはてんで弱くなる。
加持の骨張った指は緻密で狭い内側を細やかに動いて、シンジの官能を引き出す場所を的確におさえては揉みほぐしていく。
「シンジ君はエッチだからなぁ。誰かにちょっと優しくされたり気持ちよくされると、すぐ尻尾振って悦ぶんだろ」
「ぁっ…ちがう、」
ある一定の箇所まで辿りつくと、くい、と中指を折り曲げる。するとシンジは真っ赤な顔をして固く目をつむり、あ、と高い声をあげた。
その刺激に耐えるように悩ましげな表情でシーツをぎゅっと強く掴んで、熱い吐息をはあはあと弾ませる。
加持から与えられた快感に正直すぎるシンジの性器は熱を持ち、尖端からは透明な液体がいくつもの筋をつくってとろとろと流れ伝いながら、下腹部につきそうなほどに反り返っている。
「加持さんっ、あ…ぁ、ぁん」
シンジが、そんなことをするわけがないと本当は分かっている。分かっていて、狂おしいほど快感に溺れているシンジに意地悪してやりたくて、困った表情がもっと見たくて、追いつめてやりたくて、ついからかうような言葉を投げかけてしまう。
健気に奉仕するシンジを見たとき―…嬉しいと同時に、不安で胸が痛んだ。
もし、シンジがほかの誰かを好きになったとしたら。それは極力考えないようにしてきたが、そうだとしたら。
きっと今、自分が見ているような淫猥な姿を、その誰かにも晒すのだろう。
シンジはその相手に、薄く開いた唇から甘くて蕩けるような喘ぎ声を漏らし、愛撫の手に身悶えながら、大きく脚を開き―…ひくつく蕾に猛った欲望の象徴を受け入れるのかもしれない。
(存在もしない相手に嫉妬するなんて馬鹿げてる)
なのに、どうしようもないくらい押し寄せてくるこの衝動に、冷静でいられない。
愛しくて、苦しくてたまらなかった。
(執着しているのは、俺のほうか…)
ニヒルな笑みをして、加持はシンジから指を引き抜く。
「シンジ君の言ってることが嘘じゃないなら、身体を張って…証明してみせて」
「ふぁっ…」
中に挿入されていた指を引き抜かれたせいで、シンジは名残惜しそうな表情になる。
まだあどけなさの残るシンジの輪郭を指で辿りつつ、加持はシンジを食い入るほどじぃっと見つめた。
双方の瞼の奥から蕩けそうに揺らめいでいる紺藍色の綺麗な瞳。とても繊細な色をしていると思う。
触れれば壊れてしまいそうな、近づくほど離れていってしまいそうな儚い…まるで、彼自身の性格みたいだ。
「加持さん…どうしたの…?」
きょとん、とした顔で問いかけてくるシンジのつぶらな瞳に惹かれるように、加持はシンジの頭を引き寄せて噛みつくように口づけをした。
「…んっ」
シンジのくぐもった声が耳に心地よく響く。わずかに開いていたシンジの唇から素早く咥内に侵入し、ぬるりと滑らせながらシンジの舌を絡めとる。
性急に唇を征服しようとする加持の舌の動きに、シンジは全身がびりびりと痺れて支配されていく。
それは、息をつくこともできないくらい強引なキスだった。
「ふっ、ぁ…」
加持はしばらくシンジの咥内を激しく蹂躙していたが、やがてその動きはゆっくりとしたものに変わっていった。
激しく貪った後、ねっとりと絡みつくようなキスをされるのにシンジは弱い。
官能を揺さぶるキスにシンジは酔いしれ、自分からも遠慮がちに舌を絡めてくる。しばらくしてから唇をそっと離すと、シンジとの唇の間に、細い銀の糸が引く。
「はぁ、はあ…」
熱のこもった呼吸をするシンジを見て、加持は物寂しげに目を細める。
それから、その華奢な身体の背中に腕をまわし、ぎゅうっと抱きしめた。
まるで、どこにも行かないでほしいと母親に必死にすがりつく子どもみたいに。
「ごめんな」
「…え?」
「さっきはあんなこと言って。悪かった」
「悪いって…?僕、何も気にしてませんけど…」
唐突に謝る加持に、シンジは戸惑う。
シンジを抱きしめている加持の腕は、わずかに震えていた。
「加持さん、なんかいつもと違う…どうしたの…?」
「………。なぁ、欲しいならさ、今日はシンジ君のほうからしてみせてよ」
加持はシンジを抱きしめたままの格好で、そのまま柔らかいベッドに寝転ぶように仰向けに横たわる。
できる?と、加持は落ち着いた声色で、どこか寂しそうに口元に笑みを浮かべながら訊く。
それに対してシンジはさきほどの加持の様子に違和感を覚えて戸惑いながら、それでも決意したようにこくりと頷いた。
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