ある土曜日の午後。
好きなだけゆっくりしていけよ、と言われて軽い気持ちでマンションに来たのがまずかったのかもしれない。
加持の誘いを断りきれなくて、少しだけならと思い、もちろん長居する気はなかった。
リビングの柔らかいソファーで2人並んで座ってくつろぐ。
大きな液晶テレビで偶然ついていたチャンネルでは、ちょうどメロドラマの男女のラブシーンが映し出されるところだった。
何だか気まずい。しかも加持と2人きりのこの状況で。
ふいに、もし自分達も今そんな状況になったら…とあられもない妄想をしてしまい、急に恥ずかしくなった。

(何を期待しているんだろう)

こんな自分が少し嫌になる。落ち着かなくてちらりと横を見たら、自分の視線に気付いたのであろう彼と視線が合う。

「あ、」
「そんなに俺が気になる?」

加持が楽しそうに甘い声で囁く。
もうすでに目的を持っている彼の醸し出す雰囲気に、シンジは照れ臭くなって俯いてしまう。

(加持さんはすごく、大人の男のひとだなぁ)

シンジはどきどきしながら、先程の加持の質問に何と応えたらいいのか、必死に考えた。
気になる、だなんて素直に言えるわけないし、だからといって、上手な言い回しができるほどの余裕なんてものはなくて。
加持はいつだって物腰が柔らかく、優しくて、それでいて放っておいてくれない。

(こんなひとが自分の彼氏で、本当にいいのかな)

―…ときどき、そんな不安に押し潰されそうになる。
近い距離に心臓が高鳴るシンジをますます追い詰めるように、加持はシンジの肩に腕を回してさらに距離を縮めた。
心臓の音が聞こえたらどうしよう、平静を保たなくちゃいけない…なんてシンジは仕様も無い心配をする。
しかもこんな時に限って、この男は色々と仕掛けてくるのだから困るのだ。
シンジを上から見下ろしていた顔が、ゆっくりと近づいてくる。

「シンジ君は本当に…雰囲気に、弱いな」
「かっ、加持さん相手なら誰だってそうなんじゃないですか?」

面白くなさそうに呟くシンジを見て加持は可笑しそうにハハハ、と笑った。

「そうでもないぞ?俺のアプローチが効かない相手だっている」
「うそだ…」
「本当さ。まぁ、シンジ君には効果抜群なんだけど、」

言葉を言いきる前に、少し体を傾けた加持はシンジの額に軽くキスを落とす。
そして肩に回していた腕を腰に移動させ、そのまま体ごと引き寄せた。

「あ、加持さん…」
「俺みたいな悪い男に捕まっちゃって、無防備だぞ?シンジ君」

(たしかに、そうかもしれない。絡んでくる加持さんの指から、離れられないんだ)





*******





「あ、あっ」

 加持の大きな掌はシンジのソレを包み込んで上下にゆるゆると擦っている。
時折、指で尖端をピンと弾かれた。思春期真っただ中の少年にとっては、それだけでも十分な刺激だ。
透明な先走りがつぅ、と零れる。いくつもの筋になって。
ただでさえ膝の上に座らされて羞恥心でいっぱいだというのに、そんな行為を繰り返されてシンジの息は上がってゆく。

シンジは制服のズボンと下着を全て脱がされ、上はカッターシャツのTシャツ1枚に胸元のボタンは全て外されている、という格好だ。
一方、加持はまだ何も脱いでいない。
勃ちあがったものを慣れたように扱いながら、加持は愛撫されるシンジの反応を楽しんでいる。

「あぁっ」
「シンジ君は普段、自分でオナニーしないのか?」
「で、できませ…!」
「大丈夫さ。ほら、俺がシンジ君にいつもやってるみたいにすればいいんだ。今度、ちゃんと俺が教えてあげる」
「んっ、ほんとに?加持さん、教えてくれる…?」
「あぁほんとだ。可愛いな、シンジ君。食べちゃいたい、ここ」

そう言って加持はシンジをゆっくりと押し倒す。
両脚を押し広げ、その中心部を指でそっとなぞり口に含む。

「ひゃぁっ」

シンジの身体がピクンと震え、まだ未発達なそれが加持の口にすっぽりと収まる。
舌を動かし根元を舐めて尖端を甘噛みすれば、ますます零れる蜜の量は増えていった。
きつく目を瞑り、快感に耐えてぎゅっとソファーに掴まるシンジの姿は何とも健気で可愛らしい。

(このままイかせてしまおうか?)

だが、もっと満喫したい。
そう思い加持は蜜が滴り妖しく自分を誘うシンジの後孔にひざまづく。
たっぷりと唾液を乗せた舌で、その柔らかな蕾をぺろりと舐め上げた。

「んぁっ、そんなぁっ…!」

ゆっくりと人差し指を蕾に差し込み、奥へと奥へと中を解すように埋めてゆく。
最初はキツかったが、やがて少しずつ慣れてゆくそこに、指の根元まで沈める。
シンジは切なげに中をひくつかせ、誘い込むようにきゅっと差し込まれている指を食いしめた。

「ぁ、んっ」
「苦しくないか?シンジ君」
「ん、はい…」
「そうか、良かった」

加持はふわりと優しく微笑み、その指を動かし始めた。
シンジはビクンと震えて与えられる刺激を受け止めて背中をのけ反らせた。
増してゆく頬の赤み、不規則な吐息。そしてうるうると揺れる瞳が宙を彷徨うその様に、加持は興奮で気持ちが高ぶってゆく。
引き抜いては挿入し、解れてきたところで指をもう1本増やす。シンジの蕾は抵抗なく加持の節高い指を呑み込んだ。

「あっ、ぁ!…そんなに、僕のなかに…ゆび、いれないで…っ」
「まだ中学生なのに、本当にエッチな身体だな。まぁ、こんなふうにしたのは俺だけど」

 この少年を愛してしまった。もう恋にのめり込めなくなっただなんて感情が無かったかのように。
相手も同じ気持ちだったと知った瞬間、無垢な身体に手を出し、抱いて、自分のものにしてしまった。だけど後悔なんてしていない。
この純粋な心の持ち主を、大切にしたいし護りたいとも思う。

 そして誰にも、邪魔させない。

「ぁ、っか…加持さん、」
「んー?」
「もう、それはいいからっ」
「何?どうしてほしい?言ってくれないと、分からないな」
「っ、して、」
「…もっと大きな声で」
「加持さんの…ほしい、ですっ」

シンジが一生懸命絞り出すような声で呟く。その煽情的な視線が、加持の下肢に向けられる。
加持は満足そうに目を細めて微笑んだ。

「いい子だな、シンジ君。さぁ…力、抜いて」

加持は低くなだめるような声色で語りかけながら、シンジの頭を優しく撫でた。
シンジの唇から、あ、と小さな声が漏れ、その薄く色づいている艶っぽい唇に吸いつくようにキスをする。
自分だけに見せてほしい。唇も、首筋も、太股も、指先も、そして身体の奥底までも。

(シンジ君が見えないところも、全部見せて)

「ん、ぅっ」

びくっとシンジが身を震わせる。
加持が触れる何もかもが、シンジを感じさせるようだった。

(―…すべてがいとおしい)

そっと唇を離し、指を引き抜けばシンジが名残り惜しそうな声を漏らす。加持はベルトを外しファスナーを下げて己を取り出した。
そしてシンジを両足をさらに押し広げ、のけ反って先走りを垂らす欲望をひくつく蕾に押し当てる。
狭い内壁を淫らな水音を立てて、シンジは加持を咥えていく。絡みつく肉襞の熱さと締めつけに加持は吐息を漏らした。


「あぁっ、加持さ…!」


数度、腰を突き上げ、焦らずに全てをシンジの中に埋め込んでいく。

(すごく気持ちいいよ、シンジ君)

余裕の無いシンジが強い力で加持の腕にしがみつく。自分の腕の下で乱れる少年に、ぞくりとする。
緩やかに腰を打ちつける度に、シンジがその動きに合わせて猥らに揺れた。

「ぅ…あ、加持さん、おっきいっ」
「あんまり可愛いコト言うなよシンジ君。めちゃくちゃに、したくなる」
「そんなことしたら僕、加持さんのこと嫌いになりますよ…?」
「素直じゃないなぁ、俺にもうメロメロになってる癖に」
「メロメロって、死語じゃないですか…」
「ふぅ~ん、言うようになったなぁシンジ君。今だってこんな必死にしがみついてきてるのに?」
「あ…。そ、それは、」

加持が一瞬ニヤリと笑って試すように腰を引き、深く中を抉った。
いきなり奥まで挿入された衝撃でシンジの頭の中は真っ白になる。

「ひゃあっっ!」

シンジが悲鳴を上げる。それは甘い、嬌声。
加持は動く速度を少しずつ加速させてゆく。熱く大きな質量に突き上げられる快感に、シンジは身体全体を支配される。

「ぅっ、ああぁ、あ、あ…っ!」

繋がっている部分から、絶え間なく粘着性のある水音が聞こえ、シンジはその淫らな音でさえも感じてしまう。
いつまでたっても聴き慣れない、自分の恥ずかしい啼き声。
引き抜かれては奥まで挿入され、ぐりぐりと押されては中を掻き混ぜられる。

「やぁっ、ぁうっ!あぁっ」
「くっ、シンジ君…」

高い声色で喘ぎながら、真っ赤に頬を染めて目に涙を溜めるシンジ。それを加持は恍惚とした表情で見つめていた。

 ふたりが繋がっている、嬉しさと心地良さで全身が満たされてゆく。
余裕のなくなった加持が、シンジの唇にねっとりと深い口づけをする。
生温い舌と唾液が心地よくて、夢中で絡みつけると、シンジも遠慮がちに舌を絡めてきた。

「シンジ君、愛してる」
「…!」

低く掠れた声色でシンジの耳元で囁くと、中が一層引き締まった。
シンジはその言葉にこたえるかのように加持の背中に両腕を回すと、加持もしっかりとシンジを抱きしめた。

「んっあ、加持さん、もう僕、ぁっ」

加持が勢いよく最奥を突いた途端、シンジから高い嬌声が上がる。

「あ、あぁぁっ…―――っ!」

同時に、加持の欲望がシンジの身体の奥底で弾ける。熱い奔流がたっぷりと中に注がれていくのを感じながら、シンジはぽろぽろと涙を零した。
どくん、どくん、と己の中で鼓動する加持を受け止めれることのできる幸せに浸る。

「ぁ、熱い…あつ、い…」
「すまないシンジ君、中に…」
「ん…、僕はだいじょうぶ、です…」

そのままの体勢で、しばらくふたりは抱きあった。
呑み込みきれなかった加持の白濁が溢れだし、筋になってシーツに伝ってゆくシンジの艶めかしい姿。その瞳はとろん、と今にも蕩けてしまいそうだった。
熱い吐息を洩らしながら、ふわりと優しく笑ったシンジが妙に厭らしく自分を誘っているようで、加持はまた自分の欲望が膨れ上がるのを感じた。

「あれ?加持さん、なんか…」
「シンジ君が悪いんだぞ。勿論、責任は取ってくれるよな?」

こんな事後にお茶目にウィンクする姿も色っぽくて恰好いい…。などと、ふと考えてしまったシンジは、はっと我に返り身の危険を感じる。
しかし時は遅し、逃げようと思ったら既に両手首は拘束されていた。

「ちょっ、ちょっと待ってください加持さん!…だめ、ぁっ、や…あっ」

その後。
みっちり愛されすぎて拗ねてしまったシンジは、加持に1週間の手作り弁当禁止令を出した揚げ句、スイカを3玉も貰ってしまった。





*******





「あっ、加持君!」
「ん?葛城か、どうした」
「この前貰ったスイカ、シンジ君のお友達も呼んで食べさせてもらったわ。ご馳走さま」
「あぁ、良かった。なかなかいけるだろ?」
「まあね。あ、ねェちょっと聞いてくれない?加持君。最近ウチのシンちゃんがやけにツヤツヤしちゃってんのよー、恋しちゃった女の子じゃあるまいし」
「そ、…そうなのか?」
「どことなく幸せそうだし、でも聞いても何も答えてくれないのよねぇ。加持君、何があったか知らない?」
「さぁ、あの年頃の男の子は難しいからな。色々と」
「ふぅ~ん」
「(まさか。バレてる…?)」

 探るように質問してくる葛城の笑顔が、妙に恐かった。





End.

2011.09.09 


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